fate/stay nightのVita移植版をプレイした感想(ネタバレだらけ)
システム関連
フローチャートが便利
全シナリオがフローチャート化されていて、更にEXTRAモードではそのフローチャートから好きなシーンが即座に見られる機能がついています(これ少なくともPC版にはないよな)
共通ルート、セイバールート、凛ルート、桜ルートはもちろん、タイガー道場を一定数見ると見られるようになるポンチ絵シリーズのミニ劇場も何故かこのフローチャートに組み込まれています。
タイガー道場はオレンジ、選択肢は黄色というように、最低限の色分けもされている。
ラストエピソードまで見ると、まだ見ていないシーンが薄く表示されます。
好きなシーンを後から見る意味でも、このモードが真価を発揮するのはラストエピソードまで見てからだったりする。そこから選択肢を虱潰しに回収するのに非常に重宝します。
……しかし改めてフローチャートを眺めると、とんでもない量のプロット量だな、とつくづく思う。
新規BGMとオリジナルBGMが選択できる
原作PC版からあったオリジナルBGMに加えて新規BGMが追加されていて、OPTIONから変更できます。
……が、正直微妙だと感じたり。
最初はせっかくだからということで新規BGMを流して読み進めていたのですが、はじめて教会に行って『丘の上の教会』を聞いたあたりで、新規BGMを切りました。
この曲の雰囲気の変化にはたまげた。だって何故か柳洞寺で黒桜と対面している時に流れている『この世全ての悪』に近い感じになっているんだぜ?
教会に行って、言峰じゃなくて黒桜が出てくるかと思ったわ!
後でEXTRAから他の新規BGMを聞きましたが、やっぱり全体的に微妙。
『消えない想い』とか自分が気に入っている曲は軒並みオリジナルの方が全然良い。
「くすくすわらってゴーゴー」の時に流れている『侵食』も、オリジナルの方が、なんというか静寂から忍び寄る不気味さが出ていてこっちの方が好みかなぁ。
『エミヤ』は新規BGMも結構いいかも、と思った。
PC版でもそうだったが、EXTRAモードで流れている曲が無駄に音量が大きいのはなんなのか。
後、BGM視聴モードのリピートモードがリピートになっていないんだが……。リピートモードって普通、一曲をリピートするためにありますよね?
フォント
明朝、ポップ、丸ゴシック、ゴシックの四種類からポップが選べます。
私見だと明朝とそれ以外で物凄く雰囲気が変わる。
このFateの雰囲気に一番合っているのは明朝。ポップだと雰囲気がガラッと変わる気がする。
……やっぱ明朝かなー。
アニメムービー
三ルートそれぞれに用意されています。完成度の高さは言うまでもない。
ですが、セイバールートと凛ルートはムービーの内容が一部重なっている。雰囲気が似ているが(歌詞は違う)
桜ルートはメロディも雰囲気もまるで違う。桜ルートの異質さがよく現れている。劇場版ヘブンズフィールの妄想が膨らむPVみたいな感じだった。
劇場版公開はいつになるんだろうね……。
言峰が麻婆喰っている所が早くみたいなー(そこかよ)
スクリーンショットが撮りづらい
仕様の問題です。
ゲーム画面のスクリーンショットを撮るには、ホームボタンとスタートボタンを同時押しする必要がありますが、このゲームではスタートボタンを押すとスキップモードが発動します。
設定にもよりますが、少なくとも既読シーンの時にスクリーンショットを撮ると、いちいちスキップが発動して面倒なことになる。
一応コンフィグのボタン設定で、スタートボタンの設定を、『次のチャプターへジャンプ』に変更できたりする。スキップが発動するよりはましだが、それはそれで面倒くさい。
例えばここでスクリーンショットを撮ろうとすると、
このポップアップがいちいち出る。
選択肢や文章をOFFにしている時はスキップ等のモードは発動しないので、あくまで文章が出ている時の話。
4:3か16:9か
コンフィグの画面モードで4:3か16:9かその中間か選べます。
vitaは画面が16:9仕様ですが、fate stay/nightはもともと4:3です。
なので、4:3を選ぶと、左右のスペースがあまり、そこには壁紙が表示されます。
16:9を選ぶと、横幅は埋まりますが、縦が全部映りません。
縦のあまったスペースはスティックで動かして見ることができる。
近い立ち絵はキャラによっては見切れたりする。
にしてもこの人の威圧感は凄いな…。
壁紙が出ているのは好みじゃないので終始ワイドでした。
プロローグの凛の声と士郎の声は最初出ない
コンフィグでONにしましょう。
プロローグの凛はONに出来たかちょっと覚えてない。
履歴ではボイス再生できたけど。
用語集
ラストエピソードまで閲覧すると見ることができます。
本編に登場する人物、武器、宝具、等あらゆる用語を裏話も交えつつ、ユーモアたっぷりに解説しています。
ラストエピソードまで終わらせた後の最高の肴でした。
立ち絵3600枚も生み出されてたのかよ……。
シナリオ関連
コンシューマー化で表現がマイルドに
想像以上に表現が変化していたね。
家庭用から入った人は気にならないレベルだと思いますが、PC版から来た人はかなり違いがわかると思う。
まず桜ルートの虫。
あんなんだったけ?もともとのは先端がマーラ様みたいになってたような気がするんですが……。
他にも性的虐待とか処女とか強姦とかそういった言葉は使われなくなっていますね。表現が柔らかくなることによって、桜の闇が軽減されるが、まあ仕方ない。
Fate/zeroのアニメの虫蔵に放り込まれている桜を見ている人はまだピンとくるかもですけど。
そもそも桜ルートだけでなく、セイバールートでも凛ルートでもエロシーン全カットですからね(当然ですが)
なにしろ原作はエロ行為に走らないと、戦いに勝てなかったり、誰かが死んだりと、シナリオ時にも超重要な必要に迫られた行為だった。
こうして家庭用になって、別の表現、設定にすっぱりすげかわっているのを見ると、商業作品の表現の限界というのを嫌でも思い知らされますね。
まあ自分としてはエロシーン目的でFateやっていた訳ではないので、どうでもいいですが。ただ設定がまるまる変わるのは思うところがあるってだけで。
ただ、遠坂の
「えへへ、キスしちゃった」
が消滅しているのは非常に残念。
凛好きの自分としては鼻血もので、当時これを見た時自分の何かが弾けて、おそらく生涯で一番気持ち悪い声を発した。それぐらい衝撃的だったんだから!
イベントグラフィックが増えている
どれが増えているかは分からないが、確実に増えていることはわかる。
ギャラリーを眺めていて、ん?これあったっけ?というイベントグラフィックがかなりあったので(忘れているだけかもしれませんが、二割くらいそう感じた)そう感じるくらいにはイベントグラフィックが増えているということですね。
実はもう原作のPC版を所有していないので検証ができないのが悔やまれる。
ボイス
当然と言えば当然ですが、PCゲームならではの18禁描写と引き換えに、コンシューマー版が獲得した最大の利点はコレ。
どのキャラクターも演技が素晴らしいのだが、特に印象に残ったのが(ネタ、シリアス合わせて)
言峰が麻婆食っているところの中田譲治氏の演技。
これは本当に凄いぞ。息遣いから何まで、激辛麻婆豆腐を食べながら収録しているのか、と疑ってしまうほど。
これに限らず言峰の説法は思わず真剣に聞いてしまう。
終盤で黒桜が姉に対しての想いを叫ぶところ。
まさに十一年間我慢に我慢を重ねてた結果の感情の爆発、という感じ。序盤との桜との落差がすごく、圧倒される。
士郎どこから声を出しているんだ。この後怒るセイバーも見もの。
後は、PC版でも萌え死んだ『凛さま照れ怒る』とか、臓硯が死にそうになってうめき声を上げているところとか。
ここは、まさに五百年分の嘆きが詰まっていた。
というか臓硯は登場する度にワクワクしてしょうがない。
用語集に、「シナリオ担当は大好き。この人が出てくるとタイピングのノリが違うぜ」と書かれていたのが微笑ましい。どこまでも深く、歪んだ桜ルートの象徴ですな。この人は。
PC版をプレイしていた時にも思ったのが、本当に一枚絵を最大限に駆使した演出が素晴らしい所でした。絵だけでよくここまで臨場感出せるなーと。声がついたことにより臨場感さらに上がってます。
タイガー道場
改めて見ると、半分はヒント(というか答え)を的確に述べていた事実に気づき、普通に本編のヒントコーナーと機能していたことに驚いた。
最後?だったかイリヤルートが泣く泣くカットされたことに言及していて、当時は残念に思ったような覚えがあるが、この頃は「プリズマイリヤ」とかイリヤが主役の作品が本当に出てしまうとは思いもしなかったなぁ…。
桜は不憫
Fateホロウやzero、またアニメ、その他派生作品の影響で、今でこそ桜の人気は上がってきているみたいですが、当時は桜の人気は今ひとつでした。
確かライダーに負けてなかったっけ?
今回あらためて読んでみて、全ルートを含めたシナリオ構成が桜に不憫すぎると改めて感じざるをえない。
セイバーと凛の両ルートで桜の影が薄すぎるんだよなー。用語集にも目立たないとか書かれてけど、これはいいのか?
この露出度では桜ルートの中盤での、士郎の全てを犠牲にしてでも桜を守りたいという心情にプレイヤーが感情移入するのが難しいので、桜ルートで鉄心ENDを自然に選んでいく人が大量発生したことだろう。
うわっ…私の順位低すぎ…?(最初の人気投票の頃の桜さん)
ラストエピソード
正義の味方を貫き通した士郎と王として生きたセイバー、最後まで報われることがなかった二人が長い時間を経て全て遠き理想郷(アヴァロン)で出会って、お互いの一番欲しい物を手に入れた、みたいな奇跡の話。
本当に出会えたようにもただの夢であるとも取れる描写になっていますが、自分はただの夢で終わらせたほうが好きだったりします。
会えない切なさと、再会するハッピーさを比べた結果、切なさを取ったというだけです。この短さも夢っぽい。
(この冒頭にもあるように願いと前置きしているからただの夢とも取れるんですよね)
お互い心を鉄にして、かつて決心した生き方を貫き通す。しかし一番大切なものが手に入ることが決してない。そんな二人が見たささやかな夢。
切ねえ……。
セイバーを見かけて、長い、本当に長い時間心の奥底にしまい込んでいた大事なものを取り出す、みたいな描写が好きです。
士郎の人生の一番の宝物は、第五次聖杯戦争でセイバーと駆け抜けたあの二週間であることを象徴する描写ですね。
英霊になって記憶が摩耗したアーチャーもセイバー召喚時の瞬間だけは覚えているというし、こんなのを見せつけられたらもう士郎のパートナーはセイバーなんだな、と改めて認識するしかないじゃないですか!